過敏性腸症候群
過敏性腸症候群

過敏性腸症候群(IBS)とは、便通の異常に悩まされているものの、検査を行っても器質的な疾患が見当たらない疾患です。
基本的には、検査で器質的疾患を除外した上で、ストレス等が関与しているものとして診断・説明いたします。
一度の診察で確定できるものではなく、検査をしっかりと行い、器質的な病態を除外してから診断します。
命に関わる病気ではないものの、QOL(生活の質)を大きく低下させる点が特徴です。
実際に来院される患者様は、以下のような日常生活のお悩みを抱えていらっしゃいます。
通勤・移動の悩み
通勤途中などにトイレに行きたくなってしまうことで悩まれている方が多いです。中には「途中でトイレに行きたくなったらどうしよう」と怖くなってしまい、通勤自体ができなくなってしまう方もいらっしゃいます。
食事がこわい・食欲不振
「食事を摂るとお腹の調子が悪くなるのではないか」と不安になり、食事が食べられなくなってしまったという方もいらっしゃいます。
そのため、どちらかと言えば痩せている方のほうが多いという印象はあります。
食欲がないわけではないですけれど、食事が怖くなってしまっているという状態です。
当院では、主に20代、30代の若い世代が多く、男性の患者様も比較的いらっしゃる印象です。
もちろん、働いていらっしゃる女性の患者様も非常に多いです。
ビジネスマン層やビジネスウーマン層の方々が多くみられます。
はっきりとした原因は不明とされていますが、そこには「脳腸相関」や自律神経の働きが深く関わっています。
胃もそうですが、腸は消化に直結している臓器です。
そのため、自分が食べた内容に関わらず、精神的なストレスや動きによって腸が過剰に反応してしまい、胃腸の不調に直結することがあります。
そうした点からも、ストレスの緩和やメンタルケアが非常に重要になってくると考えています。
また、結局のところ、ストレスによる行動として暴飲暴食を引き起こしやすいという面もあります。
食べるものの選び方や普段の過ごし方といった、ストレスによる日常生活の乱れが原因で、お腹の不調を招いてしまっている方もいらっしゃるように感じます。
ストレス以外にも、感染性腸炎など「お腹の風邪」の後に発症するケースも多いです。
本来はもう治っているはずとお伝えできそうな方であっても、ご本人は「ずっと調子が悪いんです」と感じて、逆に食べるのを極端に控えたり、偏ったものばかり食べてしまったりして、治癒後も腸が過敏になって元に戻らなくなっているケースも多く見られます。
過敏性腸症候群の主な症状は、以下の通りです。
基本的には血便などを伴うことはありません。
もし血便がある場合は、お尻が切れてしまった(切れ痔など)ことによる出血などが考えられます。
朝の通勤・通学前などに症状が強く出て、休日や夜間にリラックスしている時は出にくいという顕著な差は、腸の動きと自律神経のバランスが関係しています。
リラックス時は自律神経が整い、腸の働きや消化も適切に行われます。
しかし、ストレスがかかるとそのバランスが乱れ、腸の動きが過敏になったり、うまく連動しなくなったりすることで不調を招くのだと考えられます。
また、胃痛や胸焼け(機能性ディスペプシア)など、お腹以外の症状を合併している患者様は非常に多いと思います。
特に機能性ディスペプシアを合併している方は本当に多い印象です。
そこから「お腹の張り(腹部膨満感)」「ゲップが出る」「おならがでる(多くて気になる)」といった悩みに繋がることもあります。
おならが出ることは生理的には良いことなのですが、それすらも気にしすぎて悩まれてしまう方がいらっしゃいます。
IBSの診断において、他の重大な病気が隠れていないかを証明する(除外診断)ことは極めて重要です。具体的には以下のような病気を疑い、除外していく必要があります。
下痢
IBD(炎症性腸疾患:クローン病や潰瘍性大腸炎など)
血便
大腸がんなど
食欲不振・体重減少
胃がん・大腸がんなど
※それが癌によるものなのか、あるいはIBDやIBSによる影響なのかは、直接検査をしてみないと分かりません
血液検査や便潜血検査だけでは異常が出ない患者様も非常に多いです。
しかし、実際に腸の粘膜を直接目で見て確認しなければ、本当に器質的な問題がないかどうかの判断はできません。
そのため、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)による直接の粘膜の確認は必須だと考えてお伝えしています。
大腸カメラで粘膜を直接確認し、何も異常がないことを証明して、初めてIBSの診断ができるというプロセスをお伝えするようにしています。
検査に不安を抱く患者様に向けて、当院では以下のような苦痛の少ない工夫を行っています。
50歳以上での発症や、急激な体重減少、血便などの症状がある場合は、どうしても大腸がんなどを疑う必要がありますので、確実に除外するための内視鏡検査が絶対に必要になります。
まずは他の器質的な大病を除外する除外診断から始まります。
IBSには大きく分けて4つの病型があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
便秘型(IBS-C)
女性にみられますが、便秘だけでクリニックを受診される方はそこまで多くなく、受診としてはレアケースな印象です。
下痢型(IBS-D)
困って来院される方が圧倒的に多いです。
女性や、痩せている男性などに多くみられます。
男性の多くは「下痢で困っている」と訴えて受診されます。
混合型(IBS-M)
下痢と便秘を交互に繰り返すタイプです。
「以前は便秘だったのに、急に下痢になる」と、ネットの情報からご自身で混合型(あるいは移行型)だと判断して来院されるケースもよくあります。
当院では、そうした患者様のご不安も汲み取りながら、丁寧な問診や検査を通じて正確な病型を判断し、個々の状態に合わせた治療方針をご提案しています。
分類不能型(ガス型など)
「おならが多い」「お腹が張る」「腹部膨満感」が主訴として顕著で、本人が強く気にされているケースが当てはまります。
患者様自身が症状を伝える際、便の形状を評価する「ブリストル便性状スケール」の表を基準にして判断することは非常に役立ちます。

当院でもこの表を非常に参考にし、患者様に直接表をお見せしながらお互いに確認しています。
4番の形状がもっともバッチリ(理想的)で、5〜7番が下痢、1〜3番が便秘という目安です。
カルテに記録を残して経過を判断する基準にしており、治療によって普通便(4番)になると患者様にもとても喜んでいただけます。
過敏性腸症候群には、国際的な診断基準として「Rome(ローム)基準」というものが存在します。
実際の日常的な診療ではそこまで厳密にチェックリストとして使うことは少ないですが、患者様はネットなどでこの基準を非常によく調べてから来院されます。
基準では「腹痛の頻度(週1回以上など)」が重視されますが、まだ3ヶ月以上の症状を満たしていない段階の患者様には、この基準を無理に押し付けることはしません。
基準を満たしていなくてもIBSの可能性を疑いつつ、「もし便の調子がそのうち自然に戻ればしばらく様子を見てもいいし、どうしても心配であればいつでも大腸カメラ検査ができますよ」とお話しし、大腸カメラ検査をしたうえで、患者様によって、ご希望やペースに寄り添って治療方針を決定します。
ガイドライン等でも「薬や心理療法の前に、まず生活習慣の改善」が推奨されています。
なぜこれほど生活習慣が重要視されるかというと、実際の食生活・睡眠・運動(ストレス)のすべてが、消化から排便する(正常な排便習慣を作る)ことにダイレクトに直結しているからです。
食事療法について避けたほうが良い刺激物としては、以下が挙げられます。
これらは腸を過剰に刺激してしまうため、控えることをお勧めします。
また、欧米で注目されている「低FODMAP(フォドマップ)食」については、小麦粉やナッツなどを極端に制限するこの食事法にこだわりすぎず、ご自身の体質にあった食事をしていただくのが一番です。
こだわりすぎてしまうと逆にそれがストレスとなり、「下痢が良くならない」という悪循環に陥ってしまう原因にもなりかねません。
食物繊維などは人によって合う・合わないの個人差が非常に激しいため、情報に振り回されすぎず、ご自身の体質に合わせた食事を意識してください。
普段アドバイスしている食事や運動のコツは以下の通りです。
どんな人にも必ず効くという特効薬はありませんが、基本となる「整腸剤」や「消化管運動機能調整薬」は、まずは体に優しく副作用の少ないものから服用していただき、お腹の反応や経過をみていくのが基本です。
下痢型に有効とされる「イリボー(ラモセトロン塩酸塩)」は、男女で処方量が異なります。その理由は体格差や薬に対する感受性の違い(耐性など)によるもので、基本的には男性のほうが用量を多く設定できるようになっています。
ただ、女性であっても長期の服用により耐性がついた場合には、用量を調整して処方することがあります。
いずれにしてもお薬に頼りきるのではなく、症状が落ち着いてきたら薬の減量・休薬も視野に入れ、様子を見ながら試していくのが良いと考えています。
西洋薬だけでなく「漢方薬(大建中湯など)」を併用・選択されることも多いです。漢方薬は治療をはじめやすい(心理的ハードルが低い)というメリットがあります。
「漢方は数千年の歴史があり、現代まで生き残っているということは、それだけ確実な効果と実績があるからですよ」とお話しすると、患者様も非常に前向きになります。
なかでも「大建中湯」は最も多く処方されている実績のある漢方なので、お腹の反応をみるためにも取り掛かりやすく、治療の作戦としてよく活用しています。
ストレスや不安、「また痛くなったらどうしよう」という予期不安が強い患者様に対して、精神科・心療内科系のお薬(抗不安薬など)を短期間使用することについて、当院ではまずは消化器内科的なアプローチを最大限提供しているのが現状です。
「必要であれば心療内科をご紹介しますよ」とお伝えすると、大抵の患者様は「そこまではいいです」とご辞退されることが多いです。
もちろん、患者様のご希望があれば検討いたします。
考え方の癖を見直す「認知行動療法」のような視点については、大げさなことをやっているわけではありませんが、日常の診察の中で以下のように取り入れています。
食べているものも日々違うので、あまりこだわりすぎない
日によってお腹や腸の状態が違うのは当たり前なので、下痢の回数や便の形にこだわりすぎないでくださいとお伝えしています
1日の変化よりも長い目でみる
今日1日の変化で一喜一憂するのではなく、数日や数週間といった長い目で見て、少しずつ良くなっていればそれで十分だと考えていただけるようお話ししています
患者様自身がお腹の調子を気にしなくなること、これこそが最終的なゴール(治癒)だと考えています。
食べているものも日によって違うので、便の調子は日々違うのがごく普通の生理現象(当たり前)です。
それを「まあ、こんなものかな」と受け流せるようになり、日常生活でトイレの心配をせず、困らずに過ごせるようになることを一緒に目指していきましょう。
よくありません。
ドラッグストアの薬で対処している人が多いですが、市販薬を自己判断で飲み続けると重大な病気を見落としてしまう危険性があります。
必ず医療機関で問診・検査のうえで適切な服用(正しい診断と処方)をしてください。
過敏性腸症候群(IBS)は、上記のような(大腸がんなどの)器質的な疾患がないうえでIBSと判断(診断)されるため、IBS自体が直近で他の大病に悪化・移行することは心配ありません。
ただし、「自分はIBSだから」と思い込んで放置するのは危険です。
何年も症状が続いている間に、全く別の原因が新しく発生している可能性はありますので、定期的な受診・検査(大腸カメラなど)を継続して受けることが非常に重要です。
もちろん可能です。
当院には、他院で薬(イリボーなど)だけを処方され続け、なかなか改善しなくて悩まれている方が非常に多く来院されます。
まずは患者様のお話を丁寧に、ゆっくりときくところから始めさせていただきますので、どうぞお気軽にご相談ください。
お薬の種類によっては、妊娠中や授乳中であっても問題なく継続して服用(治療)が可能なものがあります。
必ず事前にご相談いただければ、患者様に合わせたアプローチをいたします。
診察の上で、医師として休養や配慮が必要だと判断した場合には、診断書の発行が可能です。
IBSの患者様は周囲に誤解されやすく、精神的にもお辛い状態に置かれていることが多いですので、しっかりとお話を伺った上で社会的認知への手助け・サポートをいたします。
そんなことは全くありません。
完全に禁止されると辛いと思いますが、症状によっては可能です。治療によって症状が落ち着いている時は、ご自身のお腹の調子と相談して調節しつつ、適度に楽しむ(飲む)ことは十分に可能です。
受診のハードルを高く感じる必要はありませんが、主に以下の点を事前にメモしてきていただけると、非常に診察がスムーズです。
1. 「いつから」お腹の調子が悪くなったのか
2. 「どのような症状が、どのような頻度で」起きるか(1日の排便回数やタイミングなど)
3. 「随伴症状の有無」(腹痛やガス、その他の気になる症状が同時に伴うか)
当院の大きな強み・魅力は以下の2点です。
女性医師による、相談が可能
女性の便通は女性ホルモンの影響(生理周期)と非常に深く関係しています。
私自身もその傾向を体感しているからこそ、女性ならではのお悩みに寄り添った、話しやすい診察が可能です。
大腸カメラで確定診断可能
ホームページやネットの情報だけで決めつけず、苦痛の少ないスムーズな大腸カメラ検査を通して、器質的疾患を除外した確実な確定診断が可能です。
女性医師だからこそ、心理的な抵抗感も少なく検査を受けていただけます。
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