ヘリコバクターピロリ菌
ヘリコバクターピロリ菌

ピロリ菌は、人の胃の中に棲みつくことができる螺旋(らせん)形の細菌です。
本来、胃の中は強力な胃酸(塩酸)で満たされているため、通常の細菌が生きていくことはできません。
しかし、ピロリ菌は自身の持つ酵素で胃酸を中和し、自分の体の周りをアルカリ性に保つことができるため、強酸性の環境下でも生き残って生息していくことができます。
放置すると胃の中に持続的な慢性胃炎を引き起こす原因となります。
日本人の感染率全体は衛生環境の改善に伴い減少傾向にありますが、年代によって大きな開きがあります。
このように若い世代でも感染者がゼロではないため、「自分には関係ない」と決めつけずに一生に一度は確認しておくことが大切です。
ピロリ菌が過酷な胃の中で生存できる最大の理由は、自身が生成する「ウレアーゼ」という酵素にあります。
ピロリ菌は胃の中にある「尿素」をウレアーゼによって分解し、アルカリ性の「アンモニア」を作り出します。
このアンモニアが周囲の強烈な胃酸を中和し、菌を守るバリアとなることで胃の中に定着します。
しかし、この工程で生成されたアンモニアやピロリ菌自身が放出する毒素は、胃の粘膜を直接傷つけます。
これにより胃に慢性的な炎症を引き起こして粘膜を徐々に変化させ、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や、最終的な胃がんの発症リスクを高める原因となります。
ピロリ菌への感染は、主に免疫機能や胃酸分泌が未発達な「5歳以下の幼少期」に起こります。
食べ物や飲み物を介して口から菌が入ることが主な原因です。
胃酸の分泌がしっかりしており免疫が確立している成人が、日常の生活で新しく感染することは極めて稀(ゼロではないが頻度は非常に低い)とされています。
主な感染経路・原因としては、以下のようなものが挙げられます。
水質環境
上下水道が未整備だった時代の井戸水や、浄化されていない自然の湧き水など
家庭内感染
ピロリ菌に感染している大人(親や祖父母など)からの食べ物の口移しや、唾液を介した接触
現代においては水質環境が改善されているため、主に「乳幼児期における大人からの唾液を介した感染」に気を配る必要があります。
ピロリ菌に感染すると、まずは胃の粘膜に持続的な炎症(慢性胃炎)が始まります。
炎症が長年続くと粘膜が薄くなる「萎縮(いしゅく)性胃炎」へ進行し、さらに進むと粘膜が変化して最終的に胃がんを発症することがあります。
日本人の胃がんの発生原因の9割以上がピロリ菌感染に関連していると言われており、感染者の発症リスクは非常に高くなります。
また、胃がんや潰瘍以外にも、胃MALTリンパ腫や、血小板が減少してしまうITP(特発性血小板減少性紫斑病)といった意外な全身・血液疾患の原因にもなります。
重要なのは、「感染していても症状が全く出ないケースの方が多い」という点です。
胃痛や胸やけがないからといって安全とは限りません。
ピロリ菌は、1週間飲み薬を服用するだけで基本的に除菌(除去)が可能です。
そしてそれが確実に胃がんの予防につながります。症状がないからといって安心せず、ぜひ一度検査を受けましょう。
当院では、患者様のご状態に合わせて胃カメラを使う検査と使わない検査を行っています。
胃カメラを使用する検査
組織を一部採って調べる生検や胃液を使ったPCR検査など
胃カメラを使用しない検査
呼気テスト(尿素呼気試験)や血液検査(抗体検査)など
どれも感度の高い検査ですが、結果が境界領域の場合は複数の検査を組み合わせて確定診断を行います。
なお、呼気テストなどは胃薬(胃酸抑制薬)の内服の影響を受けるため事前確認が必要です。
胃カメラが苦手な方には、鎮静剤(うとうと眠くなるお薬)や経鼻内視鏡(鼻からのカメラ)をご用意し、嘔吐反射をできる限り軽減する配慮を行っています。
保険診療で除菌治療を行うには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
治療は1日2回、7日間続けてお薬を服用します。
胃酸を抑える薬1種と抗菌薬(抗生剤)2種の計3種類を一緒に服用します。
主な副作用として、下痢・軟便や、口の中に金属のような味がする「味覚異常」が軽く起こることがあります。
途中で自己判断で服用をやめてしまうとピロリ菌が耐性を持ってしまい薬が効かなくなるため、1週間きっちり飲み切ることが非常に重要です。
除菌に成功すると胃炎の進行が止まり、胃がんの発症リスクを大幅に抑えることができます。
1回目の除菌(1次除菌)で菌が残った場合でも、抗菌薬の種類を変える「2次除菌」を行えば、最終的に9割以上(ほぼ95%以上)の方が除菌に成功します。
ただし、「除菌成功=絶対に胃がんにならない」ではありません。
過去にピロリ菌によって胃の粘膜が痛んでしまった背景があるため、一度も感染したことがない人と比べると胃がんのリスクは高めの状態です。
そのため、除菌成功後も年に1回の定期的な胃カメラ検査を継続していくことが大切です。
次世代への感染を防ぐためには、免疫の確立していない乳幼児(5歳以下)への食べ物の口移しを控えることや、適切な手洗いを心がけることが効果的です。
特に妊活世代などの若い世代が早いうちに検査・除菌を受けることには大きなメリットがあります。
胃炎が軽いうちに除菌することでご自身の将来の胃がんリスクを大きく減らせるだけでなく、これから生まれてくるお子様への家庭内感染を未然に防ぐことができます。
主な副作用として下痢・軟便や軽度の味覚異常(口の中が苦いなど)があります。
多くは軽度で服用終了後に自然と治まりますが、症状がひどい場合やご不安な場合は自己中断せず、まずは当院までご相談ください。
配偶者様など長年生活を共にされている大人の方は、ぜひ一緒に検査を受けることをおすすめします。
お子様については急いで検査を受ける必要はありませんが(基本は5歳以上で検討)、ご希望があれば血液検査や呼気テストなど胃カメラを使わない方法で調べることも可能です。
大人の再感染率は極めて低いですが、ゼロではありません。
万が一再感染が起きた場合でも、年に1回の定期的な胃カメラを受けていれば粘膜の変化から医師が気づき、適切に対処することができます。
アルコール(お酒)に関しては、お薬の代謝に影響を与えて効果が落ちたり副作用が出やすくなったりするため、7日間の服用期間中は必ずお控えください。
タバコについても、除菌効果を最大限に高めるために期間中の禁煙が望ましいです。
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